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オープンリールからカセットヘ - オーディオテープの新しい展開

 

オープンリール方式のオーディオテープは、放送用・業務用の分野で使用され、当社は、性能をアップした新製品を導入していく。一方、カセットテープは、1970年代に入って、急速に普及していく。本格的なカセット時代を迎え、当社は、FMカセット・FCカセット・FLカセット・FXカセットを相次いで発売、一般用から高級オーディオまで幅広く品種整備を進め、カセットテープ市場で独自の地位を確立する。次いで、1977年(昭和52年)には“フジカセットレンジシリーズ”を、1979年(昭和54年)には、高級音楽テープ用としてメタルテープ“フジカセットスーパーレンジ”をそれぞれ発売し、1980年(昭和55年)には、“ニューフジカセット”シリーズを整備して、ユーザーニーズに応える。

オープンリールテープの新製品

オーディオテープについては,当社は,1960年(昭和35年)に“東芝-富士フイルムサウンドテープ”を発売して以来,業務用あるいは一般用のオープンリールテープを市場に供給してきた。1970年代に入って,一般用テープはカセットテープが主流となったが,放送用・業務用の分野やアドバンスドアマチュアではオープンリールテープが広く使われており,当社も,この市場に向けて性能をアップした新製品を導入していった。

1970年(昭和45年)1月に発売した,ハイファイテープ“富士フイルムFMサウンドテープ”は,どんなテープレコーダーでも,バイアス電流調整なしでひずみのない音を録音し再生できるテープとして,音楽ファンや音のマニアの要望に応えた製品であった。

[写真]富士フイルムFBサウンドテープ

富士フイルムFBサウンドテープ

その後,1973年(昭和48年)5月には,マスターレコーディング用の“富士フイルムFBサウンドテープ”を発売した。マスターレコーディングテープは原音の収録に用いられるテープで,一般のテープよりもはるかに厳しい性能と品質が求められるが,当社は,高感度磁性体の採用によって全周波数帯域にわたって約2dBの感度アップを実現するとともに,バックコート処理や新バインダーを採用して走行性を安定させ,磁性面の耐久性を大幅に向上させた。

次いで,1977年(昭和52年)10月には,マスターレコーディングテープの新製品“富士フイルムFBサウンドテープニュータイプ”を発売した。これは,従来からの特長であった原音に忠実な周波数特性と高出力・低歪率に加え,変調ノイズを低減し,ニュータイプのバインダーとバックコートを採用することによって安定走行性と耐久性をさらに向上させたテープであった。

このように,当社は,オープンリールテープの分野でも特に品質的に優れた製品を導入してユーザーのニーズに応えていったが,数量的には限度もあり,現在は製造を中止して精力をカセットテープに集中している。

カセットテープヘの注力

一方,急速に伸びてきたカセットテープの市場に対し,当社は,1969年(昭和44年)“富士フイルムカセットテープ”を発売して同市場に参入したが,1970年代に入って本格的なカセット時代を迎えた。

[写真]富士フイルムカセットテープ(FL,FM,FC)

富士フイルムカセットテープ(FL,FM,FC)

[写真]全日本オーディオフェアの当社ブース 1975年(昭和50年)10月

全日本オーディオフェアの当社ブース
1975年(昭和50年)10月

当社は,カセットテープの第2弾として,1971年(昭和46年)11月,“富士フイルムFMカセットテープ”を発売した。これは,微粒子磁性体を使用することによってオープンリール級のハイファイステレオ録音を楽しむことのできる高出力ローノイズのカセットテープで,音楽用として好評を博した。

次いで,1972年(昭和47年)3月に“富士フイルムFCカセットテープ”を,同年11月には“富士フイルムFLカセットテープ”をそれぞれ発売した。“FCカセットテープ”は磁性体に二酸化クロム(CrO2)を採用。カセットテープでありながらオープンリールテープに劣らない周波数特性をもち,ダイナミックレンジ,S/N比も改善して,あらゆる楽器の音声を忠実に再現できるテープとした。また,“FLカセットテープ”は,磁性体に微粒子系の高抗磁力磁性酸化鉄を使用したスーパーローノイズタイプのカセットテープで,一般のカセットレコーダーから高級デッキまでの使用に適した製品とした。

この間,1971年(昭和46年)6月には,カーステレオ用の8トラックカセット市場への参入を行ない,“富士フイルムステレオ8”を発売した。これは,従来のエンドレステープと同じ素材をカートリッジ化したもので,テープのバックにグラファイトを塗布し走行性の向上を図った製品で,OEMを含めて8トラック市場で圧倒的なシェアを獲得した。

オーディオ市場への本格参入に伴い,1971年(昭和46年)10月,東京で開催された第20回全日本オーディオフェアに初参加した。当社ブースには,オープンリールテープやカセットテープ,エンドレステープやビデオテープのほか,コンピューター用テープやマグネフィルムなどの当社製品が展示され,来場者の注目を集めた。

“FXシリーズ”の発売

[写真]富士フイルムFXカセットテープ

富士フイルムFXカセットテープ

1970年代前半,オーディオブームの盛り上がりの中で,カセットテープにも,より高性能のタイプが求められるようになってきた。このような市場のニーズに応えて,当社は1974年(昭和49年)3月,“富士フイルムFXカセットテープ”を発売し,以後,“FXシリーズ”として製品ラインを整備していった。

“富士フイルムFXカセットテープ”は,磁性体に純粋なガンマヘマタイト(γ-Fe2O3)を採用した最高級カセットテープで,ラジオ付き小型カセットレコーダーから高級デッキまで,どんな機器でも使用できる製品とした。バイアス(テープに鮮明で安定した記録をするため,音の信号と一緒にテープに送り込む高周波電流)はノーマルでありながら,1ランク上のクロームバイアスのテープに匹敵する高性能を発揮し,優れた音楽特性と超ワイドレンジを有し,オープンリールテープと肩を並べるカセットテープてあった。このほか,当社が新しく開発したバインダーシステムや新設計の走行メカニズムを採用し,走行不良による録音不良がなく,初期性能をいつまでも保つことができるなど,優れた特長を有していた。

“富士フイルムFXカセットテープ”は,当初“C-46”(往復46分録音),“C-60”(同60分),“C-90”(同90分)の3種類を発売,パッケージデザインをそれぞれオレンジ・レッド・ブルーと色分けして使い分けができるようにし,さらに往復80分録音できる“C-80”も追加発売した。

その後,1976年(昭和51年)2月には,“富士フイルムFX Jr.カセットテープ”および“富士フイルムFX DuOカセットテープ”を発売し,シリーズの充実を図った。“FX Jr.カセットテープ”は,FXカセットテープの高性能を維持しながら価格の割安なテープとし,フォークソングや歌謡曲などを気楽に楽しめるテープとした。一方,“FX DuOカセットテープ”は磁性体(ピュア・フェリックス)を二層コーティングしたFXシリーズの最高級テープで,低音から高音まで迫力のある音を再現できるテープであった。

“富士フイルムFX Jr.カセットテープ”および“富士フイルムFX DuOカセットテープ”の発売で,“富士フイルムFXカセットテープ”と合わせ,音楽用カセットテープ“FXシリーズ”が完成した。

ここに一般録音用のFLカセットテープとオーディオ用のFXシリーズ,そして高級オーディオ用のFCカセットテープと,当社のカセットテープは一般用から高級音楽用まで製品ラインを整備,カセットテープ市場で独自の地位を確立するに至った。

“フジカセットレンジ”シリーズの発売

[写真]フジカセットレンジシリーズ

フジカセットレンジシリーズ

1977年(昭和52年)10月,当社は新しいカセットテープ“フジカセットレンジ”シリーズを発売した。

“レンジ”シリーズは,20余年にわたる当社の磁気記録材料製造技術を結集して開発したもので,ノイズレベルを極限に抑え,MOL(ダイナミックレンジを表わす指標で,その数値が大きいほど大きな音でもひずまない)を高めるとともに,同価格帯では他社品の1クラス上のダイナミックレンジを実現した。また,パッケージデザインも,雷(いなずま)の走る中にダイナミックレンジのMOL数値を大きく力強くレイアウトしたざん新なデザインとした。“レンジ2”・“レンジ4”・“レンジ4X”・“レンジ6”と,“フジカセットレンジ”シリーズは一般用から音楽用最高級テープまで4種類からなっていた。

“レンジ”シリーズの発売に合わせて,当社は「雷作戦」と名付けて活発な販売キャンペーンを展開し,さらに,これまでのカメラ店ルート・電器店ルートのほかに,レコード店ルートの開拓を進めた。

その後,長時間録音用テープの要望に応え,“レンジ2”・“レンジ4”に,往復2時間録音できる120分タイプを追加発売し,長時間番組の録音などの便を図った。

メタルテープ“フジカセットスーパーレンジ”の発売

磁気テープの磁性体には,酸化鉄・二酸化クロム・コバルトフェライトなどが用いられ,それぞれ改良が行なわれて性能のアップが図られてきた。

しかし,1970年代末には,より優れた性能を発揮するメタルテープが出現し,高級音楽用テープとして,オーディオファンの間で注目された。“夢のテープ”としてその登場が待ち望まれていたメタルテープ,その原理を世界で初めて確立し,特許を取得したのは,実は当社であった。1954年(昭和29年),研究所において磁気テープの研究に着手したとき,各種磁性体の研究の一環としてメタルテープの研究を行ない,1960年(昭和35年)特許を取得している。

[写真]フジカセット スーパーレンジ C-90

フジカセット
スーパーレンジ C-90

当社のメタルテープ“フジカセットスーパーレンジ”は,オーディオカセットテープの分野で独自に新開発した超微粒子特殊合金磁性体(メタリックス)を採用することによって,低音域から高音域に及ぶ全域にわたってダイナミックレンジを飛躍的に拡大した画期的なテープで,また,カセットケースも新しい高精度ケースを採用し,1979年(昭和54年)5月に発売した。

発売当初は,“C-46”と“C-60”の2種類であったが,同年11月には長時間用の“C-90”を発売し,“スーパーレンジ”シリーズのラインアップを完成させた。

メタルテープ“フジカセットスーパーレンジ”は,最高級音楽用テープとしてオーディオファンの間で人気を博するとともに,オーディオテープメーカーとしての当社のイメージを大きく高めていった。

“ニューフジカセット”の誕生

[写真]ニューフジカセット DR,ER,UR,SR

ニューフジカセット DR,ER,UR,SR

“DR”,“ER”,“UR”,“SR” -より良い音,より良い品質を目指すオーディオの新しいエースとして,1980年(昭和55年)2月,当社は,“レンジシリーズ”に代わる新しいカセットテープ“ニューフジカセット”を一斉に発売した。

システムコンポや高級デッキの普及に伴って,音に対するユーザーの要求も高度になり,音楽の楽しみ方や好みも多様化してきた。当社は,このような音楽に対するし好の変化を調査・検討し,ユーザーのニーズに合った新しいカセットテープの開発を進めていった。そして,オーディオカセットの新しいエースとして,“ニューフジカセット”(DR,ER,UR,SR)を誕生させた。

この“ニューフジカセット”のカセットケースは,使いやすさに工夫を凝らし,窓目盛でテープ残量がわかるようにしたほか,走行性能を向上させた。また,パッケージも,透明プラスチックケースを採用し,DR(赤),ER(青),UR(銀),SR(金)と,カセットの個性をカラーで色分けするなど,現代感覚あふれるデザインとした。

優れた品質と性能の製品,活発な広告宣伝活動,それにオーディオ教室やユーザー登録制度など地道なサービス活動が相まって,“ニューフジカセット”は,オーディオファンの間で好評を博した。

 
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