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新しいX線画像診断システム“FCR”の開発

 

コンピューター処理による新しいX線画像診断システム“FCR”は、1981年(昭和56年)国際医学放射線学会で華々しくデビューする。被ばく線量を大幅に低減させるとともに、診断精度を飛躍的に高める新しい診断システムとして、内外で大きな反響を巻き起こす。当社は、期待に応えて、システムとしての完成を急ぎ、1983年(昭和58年)7月、国内販売を開始する。また、1982年(昭和57年)10月、富士エックスレイ株式会社の拡大・充実を図り、社名を富士メディカルシステム株式会社と改称するとともに、従来のX-レイ商品に加えて、“FCRシステム”など、今後の医療分野の拡大をめざしたマーケティング展開を開始する。

X-レイ市場の動向

1980年代に入って,わが国の医療事情も新しい局面を迎えた。人口構成の高齢化が急速に進み,成人病の増加や医療技術の進歩などによって,わが国の医療需要は年々増加の一途をたどっているが,1981年(昭和56年)には,医療費の規模は国民総生産の5%にも達し,医療費の増加抑制と医療保険制度の改革が社会的に大きな課題となってきた。

[写真]FCRを発表した第15回国際医学放射線学会 1981年(昭和56年)6月

FCRを発表した第15回国際医学放射線学会
1981年(昭和56年)6月

このような情勢に加えて,医療機関における新規投資予算抑制の動きや景気の停滞などの影響も受けて,近年,X-レイフィルムの需要の伸びも停滞してきた。

一方で,エレクトロニクス技術を取り入れた医用機器の発達も著しく,画像診断分野でも,超音波診断・CT・核医学などでデジタル画像法が普及し,幅広く,かつ,高度な診断技術が発達してきた。当社は,国民の基本的な願いである医療の向上に貢献することを念じ,革新的な新製品開発とマーケティング活動を展開しているが,このような医療市場の動向や新しい医療機器の発展動向に注目しつつ,従来のX線写真システムと比べ診断能力をさらに向上させるために,エレクトロニクス技術を駆使したコンピューターによるX線画像処理システム“FCR”を開発した。

“FCR”世界にデビュー

1981年(昭和56年)6月,ベルギーのブリュッセルで開催された国際医学放射線学会ICR(International Congress of Radiology)において,当社は,画期的な新しいX線画像診断システム“富士コンピューテッドラジオグラフィー”(FCR)の開発を発表した。

この“FCR”は,当社が長年にわたるX-レイフィルムの研究と新しいX線画像システムの理想像を追求する中から生まれた技術であった。当社は,X-レイフィルムを商品化して以来,その性能の向上に努め,被ばく線量低減のための高感度フィルムの開発を進め,また,1975年(昭和50年)には,希土類蛍光増感紙を用いた“富士GRENEXシステム”を世に出し,システム感度を5倍から10倍に上げるなどして診断領域を広げる効果をあげてきた。さらに,引き続き,被ばく線量の低減とともに,診断精度の向上を目指して新しい発想による当社独自の新技術をもつX線画像診断システムの研究開発に挑戦したのである。

「いつの日か革新的な新製品を世に出したいと思い,ひそかにその構想を練っていた。当時は,まだCT(Computed Tomography)も出ていなかったが,エレクトロニクス技術との結合で何か新しいものが作れるのではないか,銀の使用量を節約できる方法はないだろうか,という二つの側面から検討を開始した。1975年(昭和50年)8月,当時の中央研究所内に研究チームを編成して,本格的な研究に着手した。」

FCR研究のリーダーは,研究を始めた動機についてそう語っている。

研究チームは,研究過程で,多くの困難な課題を一つ一つ解決していった。そして,6年間の苦闘の後,1981年(昭和56年)6月,ICR’81で,世界に向けてその成果を発表することができた。

[写真]富士コンピューテッドラジオグラフィーCR-101

富士コンピューテッドラジオグラフィーCR-101

FCRシステムの構成と特長

X線被ばく線量を大幅に低減し,豊富な診断情報を提供するFCRシステムの最大の特長は,従来のX線写真システムがX-レイフィルムにX線像を記録するものであるのに対し,FCRシステムでは,高感度のX線検出プレート(イメージングプレート)を使用することにある。イメージングプレートに記録されたX線情報をレーザー光線で励起発光させて,いったん電気信号に変換し,コンピューターを使って画像を処理した後,画像記録装置で再びその電気信号を光信号に変換して“CRフィルム”にアウトプット記録するもので,人体に対するX線被ばく線量の低減と診断情報を効率よく取り出して診断領域の拡大を可能にした。

このシステムを構成している技術は,下記5点に要約される。

[写真]FCRシステムの基本構成

  1. 世界で初めてのX線画像記憶型イメージングプレートをつくり出した素材技術
  2. 精密なデジタル走査線画像をつくり出す超精密レーザー光線走査技術
  3. 最高速のX線画像計算を行なうコンピューター設計技術
  4. 複雑なシステムを連続的に制御するエレクトロニクス技術
  5. X線写真の診断能力を高めるためのソフトウエア技術

FCRの完成と富士メディカルシステム株式会社の発足

[写真]診断中のFCR臨床写真

診断中のFCR臨床写真

[写真]FCR発表を伝える新聞記事 日本経済新聞 1982年(昭和57年)3月

FCR発表を伝える新聞記事
日本経済新聞
1982年(昭和57年)3月

ICR’81で,FCRシステムに対して大きな関心が寄せられたことに引き続き,翌1982年(昭和57年)3月,東京で開催された第41回日本医学放射線学会では,“FCRシステム”について多くの臨床試験結果の発表が行なわれた。同月24日付の日本経済新聞は,「線量1/120で鮮明画像-画期的なX線撮影装置が登場」「電算機利用-がん早期発見に威力」と,FCRシステムについて大々的に報道した。

このような高い評価に励まされ,当社は,国立がんセンターなどの協力を得て,システムの完成を急ぎ,同年11月にシステムの完成を発表した。この発表は,NHKテレビニュースでも取り上げられ,画期的な新技術として全国的に紹介された。

FCRシステムの第1号機は,翌1983年(昭和58年)7月,鹿児島大学医学部附属病院に設置され,その後,逐次全国各地の病院に設置されていった。

FCRシステムの開発を機に,1982年(昭和57年)10月,富士エックスレイ株式会社は,従来のX-レイ商品に加えて,FCRシステムのマーケティングも担当することとし,社名を富士メディカルシステム株式会社と改称し,組織の充実と体制の強化を図った。同社は,当社の事業拡大の一分野と目論んでいる医療分野向けの諸製品・諸システムのマーケティングの中核たるべく活動を展開していく。

なおFCRの開発に対し,1983年(昭和58年),日本ME学会から「新技術開発賞」を受賞した。また,FCRは「’83年日経年間優秀製品賞」の最優秀賞の受賞の栄に輝いた。

 
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