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色材技術

 

カラー写真の開発で培った高度な色材技術

銀を使用する写真感光材料は、発明以来1世紀半を経過し、富士フイルムとしても70年の歴史を積み重ねてきた。その間、高感度・高品質・高解像力などの銀塩感光材料固有の特性と、それを引き出すための各種の高機能性有機化合物の開発によって、今日の銀塩感光材料は性能的に非常に高いレベルに達している。

さらに、銀を中間の媒体とする巧妙な化学反応、すなわち発色現像によって色像を作るカラー写真が考案され現在のカラー写真の基礎ができて以来、数多くの色材技術の開発・改良が積み重ねられた結果、現在の精巧なカラー写真システムができ上がった。カラー写真の発色原理(カプラーの発色反応)を【図1】に示す。

[図1]カラー写真用カプラーの発色反応

【図1】カラー写真用カプラーの発色反応
カラー写真の発色原理は極めて巧妙であり、ハロゲン化銀(AgX)の感光性を引き金とした現像主薬(QDI)と3種類のカプラーとのカップリング反応によりイエロー、マゼンタ、シアンの発色色素を生成することで全ての色を再現している。

色材技術の概要

1. リバーサルフィルムに採用した色相制御技術

富士フイルムは、長年培ってきた色相制御技術を結集し、Sカプラー/Vカプラー/Xカプラーを開発した。【図2】で示すように、これらの新規カプラーは、不要吸収成分を高度に押さえ込んだ極めて高い色純度と超高彩度な色相を高次元で実現させたばかりでなく、発色効率が極めて高いという優れた特性を有している。

[図2]新規カプラー発色色素の吸収スペクトル

【図2】新規カプラー発色色素の吸収スペクトル
Y, M, C共に、不要吸収が大幅に低下した。

また、これらの発色色素は保存性にも優れ、室内暗所保存25℃・40%(推奨湿度条件)で約300年、25℃・70%(日本の高湿な室内環境)でも約100年の驚異的な画像保存性を達成し、リバーサルフィルムの「ベルビア100F」などに導入した。

2. 写真用カプラーにおける有機合成技術

前述の3種類のカプラーの合成技術の一例としてシアンカプラーについて紹介する。有機合成化学研究所では、独自の発想で分子設計に取り組み、色純度に優れた独創的なシアンカプラーIIを開発した。この分子の合成には、種々の興味深い有機合成技術が駆使されており、そのプロセスを【図3】に示す。

[図3]新規シアンカプラー(Xカプラー)の有機合成プロセス

【図3】新規シアンカプラー(Xカプラー)の有機合成プロセス

図の1から2への立体選択的還元反応、3から4への新規なトリアゾール環形成反応、4から5への(通常の条件では導入困難な)超嵩高いアルコールのエステル化反応、7からIIへの環化反応と同時にカルボニルオキシ基を導入する反応など、多数の高度な有機合成技術により、新規シアンカプラー(Xカプラー)の製品化に成功した。

3. 追記型光ディスクにおける光堅牢化技術

CDやDVDディスクの普及に伴い、記録可能なCD-RおよびDVD-Rの需要が急増している。これらの記録層には、【図4】に示すシアニン系、フタロシアニン系、アゾ系などの有機色素が用いられており、基板面側からレーザー光を照射することによって色素を熱的に分解し、デジタルデータを記録する仕組みになっている。

ポリカーボネートの基板は、記録再生用のレーザー光のみならず太陽光や室内光なども容易に透過するため、これらの環境光にも十分耐えうる光堅牢性の高い記録層の設計が要求される。なかでもシアニン色素は、塗布溶剤に対する溶解性の高さ、吸収特性、反射特性などから、CD-RおよびDVD-Rなどの追記型光ディスクの記録用色素として最もよく用いられてきた。

[図4]CD-RおよびDVD-R用有機色素

【図4】CD-RおよびDVD-R用有機色素

しかし、シアニン色素は、他の色素に比べて著しく光堅牢性が劣る。その原因は、シアニン色素が光を吸収することにより自己増感一重項酸素酸化で容易に分解を起こすためであると考えられ、これまで一重項酸素クエンチャーを併用した光堅牢性の改善が行われていた。こうした色素の光堅牢性改善に関して、先端コア技術研究所では、従来の光堅牢化技術とは全く異なるテトラシアノキノジメタン(TCNQ)誘導体をベースにした画期的な光堅牢化新技術を開発した。

光堅牢化の原理は、色素励起一重項を電子受容体であるTCNQが電子移動消光する機構に基づいている。この原理を満足する酸化還元電位の色素とTCNQ誘導体の併用によって、【図5】に示すように、従来の2倍以上の光堅牢化が達成でき、しかも反射率もほとんど低下しないなど、極めて高い光堅牢化効果が得られ、追記型光ディスクの光堅牢化技術として有効であることを確認した。

[図5】TCNQ誘導体によるCD-R用インドジルカルボシアニン色素膜の光退色防止効果

【図5】TCNQ誘導体によるCD-R用インドジルカルボシアニン色素膜の光退色防止効果

新たに開発した光堅牢化技術は、CDからDVDまで汎用性が高く、コスト面でも有利なことから、近い将来、デファクトスタンダードになることも期待される。

将来の展望

以上述べた色相制御技術、有機合成技術、光像堅牢化技術のほかにも、J会合などの分子配列制御技術や、コンピュータを用いた理論計算化学など、富士フイルムは色材技術に関する多彩な要素技術を擁している。

これら、銀塩写真で培った極めて高い固有技術を有機的に組み合わせ、各種プリンター用色素、LCD/CCD/PDPなどのカラーフィルター用色素、発光性色素(OLED)、太陽電池用色素、医療診断などのライフサイエンス用色素など、幅広い分野での実用化を目指している。

Sカプラー(Sophisticated Coupler)

独自開発の新イエローカプラー。濁りの原因となるマゼンタ味を大幅に押さえ込み、極めて純度の高いイエロー発色を実現し、リバーサルフィルムなどに世界で初めて採用した。

Vカプラー(Victory Coupler)

独自開発の新マゼンタカプラー。イエロー味やシアン味などの副吸収成分を大幅に削減し、高純度のマゼンタ発色を実現した。

Xカプラー(eXcellent Coupler)

独自開発の新マゼンタカプラー。イエロー味やシアン味などの副吸収成分を大幅に削減し、高純度のマゼンタ発色を実現した。

関連情報

先進独自の技術を生み出す、富士フイルムの研究開発体制とは。

各研究所および各工場で行なった研究・開発などの成果や報文、総説などがご覧になれます。

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高度な技術と熟練したノウハウが蓄積された産業用光学デバイスの製造過程のご紹介。



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