スーパーバリアフィルム
開発の背景
有機ELや電子ペーパー、太陽電池など、次世代デバイスへの注目が益々高まっている。これらのデバイスのキーとなる素子には精密な構造や材料を用いるため、極微量の水分や酸素の影響で劣化して性能が低下する。例えば有機ELの劣化に対しては有機素子を空気から遮断する封止技術の効果が大きく、防湿性の高いガラス基板間に狭持された構造をしている。しかし、ガラスの取扱い難さに加え、急速に市場拡大しているモバイルツールへの応用展開を考え、プラスチックを基板として用いた、“フレキシブル有機ELディスプレイ”(薄い、軽い、割れない、曲げられる)”が求められている(図1)。
![[図1]フレキシブル有機ELディスプレイ](pack/images/review07_img_01.jpg)
【図1】フレキシブル有機ELディスプレイ
開発の概要
従来ガスバリアフィルムは、主として包装材料分野において開発されてきた。食品や医薬品の包装に用いられているガスバリアフィルムは、1~10-2[g/m2/d]台の水蒸気バリア性能を有しているが、有機ELの劣化を抑制するには、その1/10000(10-6[g/m2/d]台の水蒸気透過率)の“スーパー”バリアフィルムが必要である(図2)。
高いバリア性を達成するためには、プラスチック基板上に緻密な無機材料を含むガスバリア層膜を形成する。また、無機材料だけではフィルムに合った柔軟な膜を得ることが難しく、クラックなどの無機材料の破壊が避けられない。そのために、無機と有機を同時に用いる“有機無機ハイブリッド”により、両者の特性を併せ持つガスバリア層の構造が検討されている(図3)。
![[図2]“スーパー”バリアフィルムの水蒸気-酸素透過率特性](pack/images/review07_img_02.gif)
【図2】“スーパー”バリアフィルムの水蒸気-酸素透過率特性
![[図3]ガスバリア層の構造](pack/images/review07_img_03.gif)
【図3】ガスバリア層の構造
中でも交互積層型では、緻密な無機層とそれを保護し柔軟性を与える有機層が存在することから、高いガスバリア性能が期待されている。
無機層は、主に真空製膜法により形成される。最も重要なのはフィルム基材への低温製膜性である。その上でバリア性能、透明性、接着性、生産性などを満足する材料と製膜方法を作りだす必要があり、今後富士フイルムが取り組んでいく電子デバイス用部材開発において、非常に重要な技術である。
有機層は、表面を次層形成に最適な下地とし、また隣接層との接着やフィルムの光学特性、機械特性(カールや熱変形など)の制御などバリア性能以外全ての機能を有している必要があり、当社の有機材料技術や有機薄膜形成技術を十分に発揮できると考えている。
また、ハイブリッドフィルム開発においては、有機/無機と分野を限定せず、製品としての性能を俯瞰して、プラスチック基材を含めた各層とその界面の機能を理解し精密に制御することが重要である。



