高速精密薄層塗布技術
技術開発の背景と概要
コンピューターネットワークの発達に伴い需要が高まっているデータバックアップ用の磁気テープは、磁性体の微粒子化と磁気記録層の薄層化による記録密度向上が進んでおり、現在は1巻数TB(テラバイト)の容量に到達しようとしている。富士フイルムでは従来、蒸着などの真空成膜プロセスでしか形成できなかった数十ナノメートルの薄層磁性層を、生産性の高い塗布プロセスで形成するATOMM(Advanced super Thin layer and high-output Metal Media)技術やそれを進化させたナノキュービック技術を開発し、安価で信頼性の高いテープを供給している。このATOMM技術は写真感材などで利用されている同時多層塗布の技術を応用し、非磁性下層と磁性層をスロットダイで数百m/分の高速で同時重層塗布する技術である。ベースの高速搬送に伴って巻き込まれる空気の排除、磁性層液の薄膜伸張性、層間混合の抑止などが技術のポイントである。
今後は更なる高密度化に対応するために、より高い高速薄層塗布性に加え、磁性層内の磁性粒子の均一配列など、流体や分散の化学工学的取り扱いが重要となり、塗布点での流動設計、磁場中乾燥での粒子運動制御などの研究を行っている。またこれらの技術を発展させ、現在は真空プロセスで生産されている太陽電池や新規ディスプレー材料などを、塗布プロセスに置き換え、大幅に生産性を向上させる研究にも取り組んでいる。
![[写真]ATOMM型磁気テープ断面](pack/images/review03_img_01.jpg)
ATOMM型磁気テープ断面
![[図]ATOMM同時重層塗布](pack/images/review03_img_02.gif)
ATOMM同時重層塗布
塗布流動解析の例
![[図]流線図](pack/images/review03_img_03.gif)
流線図
![[図]圧力分布図](pack/images/review03_img_04.gif)
圧力分布図
ATOMM同時重層塗布において開発した主な技術
- ダイ設計技術
独自開発した流動解析手法を利用し、高粘度高速薄層塗布に適したダイ形状を設計 - ダイ加工技術
精密なダイ形状を実現するための素材や加工法を開発 - 重層塗布技術
高せん断流れ場でのスムーズな液伸張と塗布後の粘度上昇による2層間の混合抑止を両立する液物性の制御法を開発 - 高凝集性塗布液の高精度送液技術
液に高いせん断を加えつつ高精度で送液する技術を開発 - ベースクリーニング技術



