ニュースリリース

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富士フイルムが米国キャンジェン社と
画期的な抗がん剤「ドラッグデリバリーシステム」共同開発契約を締結
ヒトリコンビナントゼラチンを使った安全性の高いシステムを目指す


平成19年4月12日
富士フイルム株式会社

 富士フイルム株式会社(社長:古森重隆)は、ヒトリコンビナントゼラチンを活用し、抗がん剤の徐放をコントロ-ルする画期的な「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」を開発いたします。このたび、バイオベンチャーである米国Cangen Biotechnologies社(CEO & CSO:Dr. Chul-So Moon、以下キャンジェン社)と、頭頚部がんに対する新しい方式の抗がん剤DDSの共同開発を進める契約を締結しました。

 ヒトリコンビナントゼラチンとは、ヒトのゼラチンの遺伝子を遺伝子工学技術で酵母に組み込み、酵母細胞を培養、精製することで得られた純度の高いゼラチンで、富士フイルムはこのゼラチンの量産技術を開発しています。従来のウシ由来ゼラチンではBSE(牛海綿状脳症)などの人獣共通感染症の懸念が払拭できませんでしたが、このゼラチンは動物由来特有の感染症の心配がなく安全性が非常に高いと言えます。また、ヒトに対する抗原性が少ないため、アナフィラキシーショック*1を引き起こす可能性も低減できます。

 今回共同開発を進める抗がん剤DDSは、当社が開発するゼラチンを基材に、写真フィルムなど様々な製品開発で培った独自のFTD(Formulation, Targeting、Delivery)技術*2を応用し、抗がん剤の放出をコントロールすることにより、患部に長時間に渡って効果を継続させるものです。具体的には、難溶性薬剤分散技術やナノ粒子形成技術、薄膜形成加工技術を使って、既存の抗がん剤を特殊な処理を施したゼラチンでくるみ、ナノ粒子化させたもの(抗がん剤包埋ゼラチン)などを、クリ-ムまたはフイルムシ-トとして頭頚部がん患部に直接処方し、適切な量の抗がん剤を企図した期間にわたり持続的に患部に届けることを実現します。

 今回締結した共同開発契約では、まず、ゼラチンを用いた抗がん剤DDSについて、キャンジェン社は同社のCEO&CSOであり、米国Johns Hopkins大学医学部の助教授でがんの専門医であるDr.Moonのがん治療、およびがん治療薬の臨床治験に関する豊富な経験を生かし、DDS機能の評価および米国での前臨床試験を実施します。その後の臨床治験への展開も視野に入れており、末期がん患者に対し、がん進行の抑制と疼痛軽減作用をもたらす従来なかったターミナルケア薬としての提供を考えています。末期がん患者に対するこのようなターミナルケア薬は、がんの治療現場で待ち望まれているものであり、FDA(米国食品医薬品局)認可をオーファンドラッグ*3、ファーストトラック*4扱いとして早期取得できる可能性が高いと考えられます。

 
*1:
アナフィラキシーショック:
特定の物質が摂取されて体内に抗体ができ、その物質が再度、体内に入ると、初回よりも急速に激しくおこるアレルギー反応のこと。 
 
*2:
FTD技術:
乳化、分散、ナノ粒子、ナノカプセル形成、多孔質・多層薄膜等によって、目的とするケミカルを「処方化、製剤化」(Formulation)して、「目的の部位」(Targeting)に「適切な量を、適切なタイミングで届ける」(Delivery)富士フイルムの技術。 
 
*3:
オ-ファンドラッグ:
患者数が少ない疾患について、医薬品の開発を促進するための制度。 
 
*4:
ファ-ストトラック:
HIVなど、重篤であったり、生命に大きな支障をきたすような疾患の治療薬や特殊性の高い治療薬に対し、治験期間を短縮し早期に認可する特例措置。 

 また、当社の開発する「薬剤包埋ゼラチン」は、ゼラチンの物性をコントロールすることで、包埋した薬剤の放出速度を適切に制御することが可能ですので、今後、抗がん剤以外の薬剤を用いたDDSにも有用性が高いと考えており、鎮痛剤やホルモン剤など、他の経皮吸収薬剤への展開も検討いたします。

 富士フイルムは、永年培ってきたFTD技術などの優れた技術を応用した最先端の技術開発や、独自の機能性材料の提供などを通じて、人々のクオリティオブライフの向上に貢献してまいります。





1.キャンジェン社の概要

社名:
 Cangen Biotechnologies, Inc.(2000年設立のバイオベンチャ-)
所在地:
 米国 メリーランド州ベセスダ
代表者:
 Dr. Chul-So Moon, CEO & CSO 米国Johns Hopkins大学 医学部 耳鼻咽喉科、頭頚部外科 助教授、
 Johns Hopkins病院腫瘍センター医師 頭頚部がん分野の新進気鋭の研究者。
従業員数:
 17名
主要技術・事業内容:
 1)Johns Hopkins大学で発見されたがんの早期発見技術の商業化権利を取得し、がん領域における早期検出や
  治療に関する診断及び治療法の開発を行っている。
 2)遺伝子の「マイクロサテライト解析技術」およびがん特異蛋白質の「質量分析スペクトル解析技術」の2つの解析
  技術を保有し、早期がんの診断および治療法開発に生かしている。

2.富士フイルムとキャンジェン社の関係

 富士フイルムは元FDA長官フランク・ヤング博士(Dr.Frank E. Young)が主催する国際技術交流組織であるコスモス・バイオ・ライフ・サイエンス・アライアンス(The Cosmos Bio Life Science Alliance、以下コスモス・アライアンス)に加盟し、バイオベンチャ-であるキャンジェン社に出資している。

3.コスモス・アライアンスとは

 コスモス・アライアンスは、2002年8月に設立されたクラブ組織で、同クラブは革新的なバイオ技術を持つベンチャー企業を資本力のある有力企業に紹介、両者の共同開発、技術提携、資本提携などを実現させることによって、最先端バイオ製品の事業化を促進することを目指している。投資利益を目的とする一般的なバイオベンチャー・キャピタルと異なり、メンバー間の協業を促進させることによってバイオ産業そのものを発展させることを目的としているのが特長。
 富士フイルムは、バイオ先進国であり世界最大市場の米国において、ライフサイエンス事業に関する技術及び事業取り込み先の発掘を行う目的で同クラブに加盟しています。



本件に関するお問い合わせは、下記にお願いいたします。
お客さま  ライフサイエンス事業部  TEL 03-6271-2158
報道関係  広報部
 TEL 03-6271-2000



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