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| 暗室の空気と、そこで過ごす時間が好きだった 2001年、それぞれ違った光を放つ個性豊かな写真集が三冊同時に発売された。何気ない日常の風景のワンシーンを丁寧に綴った『うたたね』、日本各地で打ち上げられる花火を追いかけた『花火』、そして同名のドキュメント映画を独自の視点で撮り下ろした『花子』。この三つの世界がひとりの写真家によって上梓されたことと、これがデビュー作であるという衝撃。『うたたね』『花火』は第27回木村伊兵衛写 真賞を受賞し、「写真家・川内倫子」の名は日本中…いや世界中に響き渡った。 以降、世界中で個展を開催し、高い評価を受ける川内さん。しかし学生時代は、グラフィックデザインを学んでいた。そのカリキュラムのひとつでしかなかった、週に一度の写真のコース。まず川内さんを魅了したのは、写真のプリント作業だったという。当時はプリントしたいがために写真を撮ってたようなもの、と語る。 「短大でやる週に一回の写真のコースなんて、まぁ、わりとアバウトなんです。露出もなにもわからないまま写真を撮って、プリントするだけみたいなもの。でも、そのプリント作業がすごく自分としては面白かったんです。暗い部屋の中で、だんだんと印画紙に像が浮かび上がってくる瞬間とか、現像液の酢酸の匂いだとか……暗室の空気そのものと、そこで過ごす時間がとても好きでした」。 デザインよりも写真のほうがずっと面白いと、学校を卒業後スタジオのスタッフとして就職。あくまで写真技術を学ぶためだったという。 「本当にカメラや写真について何にもわからなかったので、学校の代わりという気持ちでしたね、スタジオには申し訳ないけど(笑)。現場で仕事として覚えていくほうが早いって思ったし、実際、私の基本の写真技術はここで働きながら、一から覚えていったものがほとんどですね」。
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