「戦後写真の巨人」という呼び名にふさわしい活動を展開してきた東松照明。その彼の初期の代表作を一望する回顧展が、名古屋の愛知県美術館で開催されている。お近くの方はもちろんだが、旅費がかかってもぜひ見ておきたい展示ではある。
東松照明は1930年に名古屋市東区に生まれ、54年に愛知大学を卒業して上京するまで同市で暮らした。今回は、その後愛知県に戻って撮影したシリーズを含めて約200点が展示されている。そのうち約半数が、ネガをあらためて見直してプリントした未発表作だという。
特に注目されるのは、愛知大学写真部時代に開催された写真展に出品した「皮肉な誕生」(1951)、「残酷な花嫁」(同)などの、写真をはじめたばかりの頃の作品である。よく小説や詩について「処女作にその後のすべてが含まれている」という言い方をするが、それは写真家の場合も同じようだ。大学時代のみずみずしい作品を見ると、その後の彼の写真に一貫している、現実世界と精神世界とを行ったり来たりするような視点が、はっきりと形をとっているのがわかるのだ。
|