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映画用カラーネガフィルムの飛躍的向上とテレビ用高感度フィルムの開発

 

映画用カラーフィルムは、輸出適性品の完成によって、海外市場にも伸長する。さらに、1977年(昭和52年)、超微粒子で、色再現性に優れ、画質が一層向上した“フジカラーネガティブフィルムA(エース)”を発売する。一方、テレビニュース分野でも、1974年(昭和49年)、世界に先駆けて超高感度の“フジカラーリバーサルTVフィルムRT400”を、また、1978年(昭和53年)には、さらに感度を高めた“RT500”をそれぞれ発売する。これらの新製品は、現像処理適性にも優れ、国内外の映画会社やテレビ局に採用されていく。その後、ビデオカメラを使用するニュース取材のENG化が進行するのに伴い、テレビ用16mmカラーリバーサルフィルムの需要は、減少傾向をたどる。

海外向け映画用フィルムの輸出拡大

1968年(昭和43年)から1972年(昭和47年)にかけて,カラーポジフィルム“タイプ8819”をはじめ,カラーネガフィルム“タイプ8516”など輸出適性品の完成により,映画用フィルムの輸出は急速に拡大していった。

映画用カラーポジフィルムは,1968年(昭和43年)の輸出適性品の発売以来,輸出も順調に伸長し,米国でも大量に使用されるようになった。しかし,カラーネガフィルムについては,現場での長年の使い慣れなどもあって,なかなか採用されず,初めてアメリカ映画に使用されたのは1973年(昭和48年)のことであった。

その後,20世紀フォックス社の人気テレビ映画「ペリー・メイスン」(Perry Mason)に使用されて弾みがつき,使用作品数も短期間に50本を超えるようになり,使用実績が積み重なるに従って品質的にも評価されるようになった。

また,英国でも高い評価を得て,次々と採用された。なかでも,1975年(昭和50年)のクリスマス映画として封切られたミュージカル大作「トム ジョーンズの華麗な冒険」(The Bawdy Adventures of Tom Jones)は,撮影用のカラーネガフィルムとプリント用のカラーポジフィルムともに当社製品が使用され注目された。また,1976年(昭和51年),BBC放送を通じて放映されたチャールス王子自ら出演のカンタベリー大寺院の紹介映画でも,当社のカラーネガフィルムとカラーポジフィルムが採用され,関心を集めた。

さらに,1976年(昭和51年)2月にオーストリアのインスブルックで開催された第12回冬季オリンピックの記録映画「ホワイトロック」(White Rock)でも,当社の映画用フィルムが採用された。「ホワイトロック」は,翌年2月,わが国でも公開されたが,冬季とはいえ,オリンピックの記録映画に採用されたことによって,当社の映画用カラーネガフィルムおよびカラーポジフィルムは,その真価を世界に認められ,劇映画製作会社をはじめ,テレビ映画製作会社などに広く採用されていった。

映画用カラーネガフィルム“A(エース)”の開発

[写真]フジカラーネガティブフィルムA(エース)35mm(タイプ8517),16mm(タイプ8527)

フジカラーネガティブフィルムA(エース)
35mm(タイプ8517),16mm(タイプ8527)

1977年(昭和52年)6月,当社は映画用カラーネガフィルムの新製品“フジカラーネガティブフィルムA(エース)”を発表し,7月に16mm(タイプ8527)を,10月には35mm(タイプ8517)を,それぞれ発売した。

“A(エース)”の名にふさわしい新時代のカラーネガフィルムが登場したのである。

“フジカラーネガティブフィルムA(エース)”は,新開発のカプラーや多くの新技術の採用により,粒状性や色再現性など,映画用カラーネガフィルムに要求される諸性能を追求して開発したものであった。露光指数100の感度で超微粒子,優れたシャープネスで画質が一層向上し,特に16mm映画の分野で大きな威力を発揮した。また,現像処理面では40℃を超える高温迅速処理に適応する特性をもたせることが可能となり,現像所の高能率化に寄与した。

“A(エース)”は,内外の映画会社やテレビ局に採用されて数多くの作品が作られ,また,テレビのコマーシャルフィルムや教育文化映画などにも使用され,まさにA(エース)にふさわしい製品であるとの評価を得た。なかでも,新製品発表の際製作したデモンストレーション映画「風」(THE WIND)は,1977年(昭和52年),バンコクで開かれた第23回アジア映画祭で,みごと最優秀記録映画賞(Award for Best Short Film)に輝いた。

当社は“A(エース)”の発売を記念し,劇映画をはじめ,テレビ映画・教育文化映画,その他広く映画分野で活躍するカメラマンを対象に,1978年(昭和53年)7月「A(エース)の会」を発足させ,会員からの意見をよりよい製品づくりに反映するとともに広く普及活動を展開していった。

この間,1974年(昭和49年)4月,当社映画用フィルムの販売特約店を当社創業以来その任にあった長瀬産業株式会社から,新たに設立された報映産業株式会社に移し,販売体制の強化を図った。

[写真]フジカラーネガティブフィルムA(エース)のデモ用映画「風」のシーン[写真]フジカラーネガティブフィルムA(エース)のデモ用映画「風」のシーン

フジカラーネガティブフィルムA(エース)のデモ用映画「風」のシーン

テレビ用“RT400”,“RT500”の開発

映画用フィルムで国際水準の優秀製品をつくり出した当社は,テレビ用16mmカラーフィルムでも世界最高水準の製品を生み出した。

テレビ用16mmフィルムとしては,1968年(昭和43年),ニュース取材用の“フジカラーリバーサルTVフィルムRT100”(タイプ8424)を発売し,NHKをはじめ全国のテレビ局に納入してきたが,その後も高感度化・高性能化のための研究を重ねてきた。そして,1974年(昭和49年)6月に“フジカラーリバーサルTVフィルムRT400”(タイプ8425)を,同年8月には“RT100”の改良品(タイプ8426)を,それぞれ発売した。

[写真]フジカラーリバーサルTVフィルム RT400(タイプ8425)

フジカラーリバーサルTVフィルム
RT400(タイプ8425)

[写真]フジカラーリバーサルフィルム RT500(タイプ8428) RT125(タイプ8427)

フジカラーリバーサルフィルム
RT500(タイプ8428)
RT125(タイプ8427)

“RT100”と“RT400”は,いずれもテレビニュース撮影用フィルムで,“RT400”はタングステンタイプで露光指数400と,当時のテレビ用16mmカラーフィルムとしては世界最高の感度を誇っていた。このため,国会中継やナイターなど,ライトが使用できない場所でも鮮明な映像が得られるようになった。また改良品“RT100”(タイプ8426)は露光指数100の一般撮影用で,従来の“タイプ8424”を軟調化し,テレビ向けに画質を改良したものであった。両フィルムとも写真乳剤膜に硬膜処理を施すことによって,従来現像前に行なっていた前硬膜処理をせずに高温迅速処理を可能としたので,さらに現像処理の迅速化が可能になるとともに,仕上がりの安定性の向上に大きく寄与した。

“RT400”は,各テレビ局での使用の結果,シャープネスや粒状性・色再現性などに優れていることが確認され,“RT100”ともども全国のテレビ局に採用された。

一方,海外でもテレビ用カラーリバーサルフィルム“RT100”と“RT400”は,英国BBC放送にも採用され大きな話題となった。BBC放送は世界で最も権威のある放送局の一つで,使用機材について厳しい規格を設けており,BBC放送に採用されるということは,その製品の高品質と高信頼性が認識されると同時に,欧州各国の放送局の協力組織であるヨーロッパ放送連合(European Broadcasting Union)の全メンバーに使用されることを意味していた。それだけに,放送用品を扱う企業にとって,その製品がBBC放送に採用されることは極めて重要なことであった。

当社の“RT100”と“RT400”は,BBC放送の技術者およびカメラマンによる長期間の念入りなテストの結果,その品質および性能の優秀さが認められたもので,ニュース取材その他で縦横の活躍をした。このBBC放送の採用を契機として,他のヨーロッパ各国の放送局にも次々と採用され,輸出量も急伸していった。

その後,1978年(昭和53年)12月には“RT400”の感度をさらに高め,露光指数500の新製品16mm“フジカラーリバーサルフィルムRT500”(タイプ8428)を発売した。このフィルムは,超高感度のタングステンタイプで,照明光量の少ない室内撮影や夕景・夜景などの撮影,高速度撮影に適し,また,増感現像特性をもち,露光指数1000に増感現像しても,階調やカラーバランス,シャープネスなどの劣化の少ない優れた画像が得られるようにした。

また同時に,露光指数125の16mm“フジカラーリバーサルフィルムRT125”(タイプ8427)も発売した。“RT125”は従来の“RT100”に代わるもので,テレビニュースをはじめ,一般記録や工業・学術用に広く採用されている。

このように,当社はテレビ用のカラーリバーサルフィルムの性能の向上と品種の整備を進めてきたが,この間,テレビ局各社ではニュース取材用にポータブルビデオカメラとVTRを使用するENG(Electronic News Gathering)化が急速に進んできた。テレビのニュース取材のENG化は,1970年代の初頭,米国でCBSがポータブルカメラとVTRを議会に持ち込んだことからスタートしたといわれているが,1970年代半ばには,日本のテレビ局もENG方式の導入を開始,現像処理を必要としないなど,取材から放映までの手軽さと迅速さによって急速な普及をみた。このため,テレビ用フィルムの需要は急速に減少していった。

 
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