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PS版の成長 - マークIIシリーズからマルチグレインヘ

 

オフセット印刷の替及に伴って、PS版の需要は急速に増大し、PS版の高品質化、高印刷力が強く求められる。当社は、このような要請に応えて、次々と新製品を開発し、品質の向上と品種の整備を進める。そして、1978年(昭和53年)には“マークIIシリーズ”を、さらに1981年(昭和56年)にはアルミ板表面の構造を多重砂目構造にした“マルチグレイン”シリーズを発売する。この間、ロングランプレート“LAN”を開発し、多様化するニーズに応えるとともに、PS版自動現像処理システムとして“DCシステム”・“ESシステム”を開発して、PS版処理の省資源化と安定化を実現する。一方、樹脂凸版“富士トレーフ”を国内総発売元として販売する

PS版の性能向上と品種の整備

1965年(昭和40年),オフセット刷版材料としてPS版を商品化して以来,当社は,性能の向上と品種の整備を進めてきた。その結果,ネガ版とポジ版の各種製品を発売するとともに,1969年(昭和44年)にはアルミ表面に陽極酸化を施すことによって耐刷力を高めたネガ版“プラノネガティブアノダイズドグレンコート”(GAN)の開発に成功し,PS版は軽印刷分野のほか,一般印刷の分野でも広く利用されるようになった。

[写真]印刷会社におけるPS版を使用した作業[写真]印刷会社におけるPS版を使用した作業

印刷会社におけるPS版を使用した作業

1970年代に入って,カラー印刷の普及に伴ってPS版にもより高度な性能が求められるようになってきた。当社は,こうした要請に応え,PS版の性能の向上に努めるとともに,用途に応じた各種PS版の整備を進めていった。

耐久力の向上と印刷仕上がりを改善するために開発した陽極酸化法による表面処理技術は,1971年(昭和46年)9月に発売した陽極酸化を施したポジ版“プラノスーパーポジティブアノダイズドグレンコート タイプ392”(GAP392)に引続き,同年12月に発売したネガ版“プラノスーパーネガティブアノダイズドグレンコート タイプ392”(GAN392)にも実用化した。“GAP”と“GAN”は,いずれも本機用PS版として採用され,刷りやすさも一層向上し,ツヤとボリューム感のある印刷物が得られるようになった。さらに,陽極酸化層の皮膜は硬いので,紙粉などの異物による砂目の磨耗やキズに強く,安定した条件で印刷でき,高級美術印刷のロングランニーズにも応えることができるようになった。

また,校正刷りと本機刷りの調子のズレをなくすため,砂目の構造と感光組成物に改良を加え,1971年(昭和46年)9月,校正刷り専用の“プラノスーパーポジティブグレンコート タイプ192”(SGP192)を,翌年4月には校正刷り・本機刷り兼用の“プラノスーパーネガティブグレンコート タイプ192”(SGN192)をそれぞれ発売した。

これらPS版のラインアップの整備に伴い,1974年(昭和49年)4月には製品名称の頭に付けていた“プラノ”の冠称を廃し,“富士フイルムPS版”に統一した。

同年11月には,着肉性(インキのつき具合)を改善するとともに,感光層の画像部・非画像部の差をはっきり識別できるようにした焼出し画像型ネガ版“富士フイルムPS版ニュータイプSGN”(N-SGN)を,続いて翌1975年(昭和50年)5月には,陽極酸化処理し耐刷力を高めた“富士フイルムPS版ニュータイプGAN”(N-GAN)を,それぞれ発売した。

また,オフセット輪転機の普及に伴って,超ロングランのPS版が求められ,同年5月に感光性樹脂のPS版“LAN”を開発し,発売した。“LAN”は30万枚通し耐刷力を有する最高のロングランプレートであった。

その後,1976年(昭和51年)4月には焼き枠内でのフィルムとPS版の真空密着を高める研究を進め,新製品“GAP-N”を完成した。これは,感光層上にマット状の突起をもたせ,フィルムとPS版の間の空気を早く逃がして密着性をよくすることにより,真空密着時間を短縮し,さらに,画像のボケによる不合格品を減少させたものであり,刷版工程の能率の向上に大きく貢献した。

マークIIシリーズの開発

PS版は,オフセット印刷工程の省力化・合理化と印刷物の品質の向上に寄与し,急速な普及をみていった。とりわけ,後述する吉田南工場の完成によって品質も供給能力も整備し,当社のPS版は国内で圧倒的なシェアを占めるに至った。

しかし,印刷業界では,より優れた印刷物を求めて技術革新が急速に進展し,PS版に対してもさらに高品質化・安定化・処理の省力化などが強く要求された。

当社では,このようなユーザーの要望に応えて,ユーザーニーズを的確に把握し,より優れた商品をつくり出すために努力を重ねていった。そして,その一環として,製版・印刷現場の実態調査を行ない,全工程を徹底的に分析して改善点を洗い出し,新しい商品づくりに生かしていった。

このようなユーザーニーズの把握から生まれたのが,1978年(昭和53年)4月に発売したPS版の新シリーズ“マークIIシリーズ”である。

マークIIシリーズとして,当初,はん用ポジタイプの“SGP-II”と陽極酸化処理を施した高級印刷向けの“GAP-II”の二つの商品を発売した。これらのポジタイプの“マークIIシリーズ”は,いずれも特殊表面加工により真空密着時間を短縮するとともに,感度アップによる露光時間の短縮,焼出し画像による露光後の版の見やすさなど,刷版工程の迅速化・能率化をさらに向上させた製品であった。

[写真]富士フイルムPS版 SGP-II(レーベル)

富士フイルムPS版
SGP-II(レーベル)

[写真]富士フイルムPS版 GAP-II(レーベル)

富士フイルムPS版
GAP-II(レーベル)

[写真]富士フイルムPS版 SGN-II(レーベル)

富士フイルムPS版
SGN-II(レーベル)

[写真]富士フイルムPS版 GAN-II(レーベル)

富士フイルムPS版
GAN-II(レーベル)


翌1979年(昭和54年)3月には,ネガタイプの“SGN-II”,“GAN-II”を発売した。このネガタイプの“マークIIシリーズ”は,着肉性の向上によって刷り出しがスムーズとなり,焼付け時間の短縮によって作業能率と生産性の向上を実現した。

また,同年には,ポジタイプ校正用の“SGP-KII”,両面使用できる校正用の“FPP-BII”を,1981年(昭和56年)1月には両面使用できる軽印刷用のネガタイプPS版“SSN-II”を追加発売し,マークIIシリーズを完成させた。

マークIIシリーズは,綿密な調査を経て商品化した製品であっただけに,ユーザーのニーズに適合し,当社のPS版の使用先を拡大するうえで大きな力を発揮した。

マルチグレインPS版の開発

印刷・製版工程へのコンピューターの導入が活発になり,品質・工程管理がよりシビアになるにつれて,刷版は製版工程と印刷工程とを結ぶかなめとして,ますますその重要度を強めてきた。それに伴い,刷版材料にもより高度な性能が求められるに至った。

このニーズに応えるため,当社は日本軽金属株式会社と共同で新しいアルミ表面処理方法の基礎研究を行ない,さらに独自に応用開発を進めて,1981年(昭和56年)3月,新しいPS版マルチグレインシリーズ開発の第1弾として,まず,ポジタイプの“FUJI PS-PLATE FPD”を発売した。

[写真]マルチグレインの構造

マルチグレイン方式は,従来は単純な単構造または二層構造であったアルミ板の表面処理(砂目立て)を多層構造(マルチグレイン)とし,それぞれの層に機能・役割を分担させることによって,各機能が有機的に複合し,補い合うように設計したものである。すなわち,“FPD”ではアルミ表面の大波を構成するクレーター,中波を構成するハニカム,微小波を構成するマイクロポアの多層構造とし,クレーターは主として調子再現性と保水性を,ハニカムは耐刷力や汚れにくさ・現像適性を,マイクロポアは刷りやすさ(インクと水のバランス,耐磨耗性)というように,それぞれ主たる機能を分担し,全体として最高の性能を発揮するようにしたものである。したがって,“FPD”は,(1)インキと水のバランスがとりやすく,保水性もよいので汚れにくい(刷りやすい),(2)ハイライト部の再現性に優れ,また,力強い仕上がりが得られる,(3)どのような印刷条件下でも優れた耐刷力を発揮するなどの特長を有しており,ユーザーの高い評価を得た。

マルチグレイン方式は,“FPD”に次いで,その後,1983年(昭和58年)6月発売の耐刷力のあるネガタイプの“FND”や1983年(昭和58年)10月発売の高感度ポジタイプPS版“FUJI PS-PLATE FPQ”などに採用し,順次品種を整備していった。

PS版マルチグレインシリーズは,印刷および関連部門の発展に大きく貢献したことを認められ,1982年(昭和57年)2月,日本印刷学会技術賞を受賞した。

PS版処理システム“DC”,“ES”システムの開発

PS版の処理は,当初は手現像してラッカー盛りを行なっていたが,内型タイプのPS版が開発されるに及び,自動現像処理が可能となった。これに伴い,当社は,1968年(昭和43年)9月“プラノPSオートプロセサー1000”を発売,その後,PS版の品種の増加につれて,それに合った処理剤や処理機を開発して需要に応えてきた。

[写真]富士PSプロセサー800E

富士PSプロセサー800E

1979年(昭和54年)5月,ポジタイプPS版の現像液の自動補充システム“DCシステム”を完成し,発売した。“DCシステム”は,PS版の処理量と時間経時に応じてPSコントローラーによって現像液を自動的に補充するシステムで,現像液の長期安定化により均一な刷版が得られ,また,現像液の寿命を大幅に伸ばすことによって省資源化を実現した。

また,PS版の処理には大量の水を必要とする。そこで当社は,PS版と処理剤,そして機器の組み合わせで水洗工程を不要とするPS版処理システムの開発に取り組み,同年6月,処理剤とPSプロセサーEシリーズ(400E,600E,800E)の“ESシステム”を完成した。これは,プロセサーの給排水管を不要にし,廃液の集中処理を可能にしたシステムで,設置スペースも小さくてすみ,省資源化や公害防止にも役立つなど,画期的なPS版処理システムであった。

PS版のマークIIシリーズと“DCシステム”,“ESシステム”の完成によってPS版の先進システムが確立し,PS版の普及に拍車をかけていった。

PS版の輸出開始

PS版の輸出は,1969年(昭和44年)から東南アジア地域に向けて開始したが,1977年(昭和52年)からは欧米地域への輸出も開始した。

欧州市場では,すでに大きな市場が形成されており,PS版の使われ方も日本市場と共通する部分が多く,特に,日本で高級カラー印刷物に多用されているポジタイプPS版が欧州の主要市場である西ドイツ,フランス,イタリアに広く普及しており,品質的に十分に市場に受け入れられるとの見通しに立ってスタートした。

当社のPS版は,“ESシステム”が好評を博したのをはじめ,その後,マルチグレインタイプを商品化したことによって,急速に欧州全域に広まっていった。

北米市場は,日本や欧州と異なり,ネガタイプPS版を主体とする市場である。当社は,導入に際して十分な市場調査を行ない,マルチグレインのネガタイプPS版を商品化したうえで,印刷機上での扱いやすさ,刷り上がりの美しさ,およびESシステムによる処理の簡便さをセールスポイントとして本格的な出荷を開始した。

感光性樹脂凸版“富士トレリーフ”の発売

平版オフセット印刷と同様に,凸版印刷分野でも新たな動きが出てきた。活字組版や金属凸版は,作業性・公害性の点で問題があり,これらの解決と写真植字の普及に伴うCTS化への移行により,感光性樹脂凸版材が注目されるようになった。

当社は,印刷製版の重要な一分野として,かねてから,凸版印刷用の刷版材料の開発も進めていたが,東レ株式会社がすでに樹脂凸版の製品化を完成していたので,当社は,東レ社の当該品をもって凸版印刷市場に参入することとした。そして,1973年(昭和48年)6月,東レ社と提携し,国内販売に関し当社が東レ社の販売総代理店となり,同年10月“富士トレリーフ”の商品名で発売した。

[写真]富士トレリーフの製版工程

“富士トレリーフ”は,ポリエステルフィルムまたはスチール支持体の基板の上に,接着兼ハレーション防止層と感光性ナイロン樹脂層を設けたもので,特殊ナイロン樹脂を使用しているため,(1)画像の再現が優れている(高級写真印刷が可能),(2)耐刷性が優れている(50万枚通し以上が可能),(3)可とう性をもつなどの特長があった。

ネガフィルムを密着して水銀灯で露光すると光の当たった部分は溶剤に溶けなくなる。次いで,基板上に凹凸の樹脂層を形成するために光の当たらなかった部分の樹脂は溶剤で洗い流して,右図のように刷版を作成する。

基板の種類により,3種のタイプがあり,基板がスチールの“CSタイプ”,砂目立てアルミの“GAタイプ”およびポリエステルフィルムの“LFタイプ”があった。“CSタイプ”および“GAタイプ”は,文字や写真の印刷,原色版印刷など,活字組版や金属凸版と同じように使用でき,耐刷性に優れている。“LFタイプ”は,手書き伝票類や差し替えの多い複写伝票類などのビジネスフォーム印刷用である。

その後,凸版分野での各種用途に応じた品質要求に応えて,1979年(昭和54年)11月,“富士トレリーフ”Pタイプ,Fタイプ,Bタイプの3品種を追加発売した。“Pタイプ”は基板にスチールを使用し,新聞紙型取り用で鉛版に代替しうる強度を備えていた。“Fタイプ”と“Bタイプ”は基板にポリエステルフィルムを使用し,印刷終了後の版の保存にもスペースを取らないので好都合であった。“Fタイプ”は,特に,ベタ刷り部分の多いシールやレーベル類の印刷用に適しており,また,“Bタイプ”はビジネスフォーム用として用紙へのインキ着肉性に適した製品であった。

これまでの商品は,洗い出しの溶剤にアルコールを使用するタイプであったが,環境面・安全面から,水処理のニーズが高まり,この要望に応え,1980年(昭和55年)6月,水現像タイプの“WF”,翌年1月には“WF-B”を発売し,品種をそろえ,以降,水現像タイプ16品種,アルコール現像タイプ11品種,さらに高性能プロセサーまでのシステムラインアップ化を図り,ユーザーの要望に応えている。

 
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