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ニュースリリース

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がん組織に薬剤を選択的に送達し、薬効を高める新たなリポソーム製剤「FF-10850」の研究成果

新規開発のリポソームに抗がん剤を安定的に内包
高い腫瘍縮小効果・免疫チェックポイント阻害剤との相乗効果を確認

2018年11月13日

富士フイルム株式会社

富士フイルム株式会社(社長:助野 健児)は、卵巣がんなどを適応症とする抗がん剤「トポテカン」(*1)を、新規開発のリポソームに安定的に内包することに成功しました。また、「トポテカン」をリポソームに内包した薬剤(開発番号:FF-10850)を用いて実験を行ったところ、高い腫瘍縮小効果を確認するとともに、免疫チェックポイント阻害剤(*2)との併用投与では単剤投与の場合と比べて生存期間が延びるなど、さらに高い薬効を発揮することも実証しました。今後、これらの非臨床試験の結果をもとに、早期の臨床試験開始に向けて準備を進めていきます。

富士フイルムは、幅広い製品開発で培った高度なナノ分散技術や解析技術、プロセス技術などを活かして、生体膜の構成成分であるリン脂質などをカプセル状にした微粒子(リポソーム)の中に薬剤を内包したリポソーム製剤の研究開発を推進しています。現在、抗がん剤「ゲムシタビン」(*3)を内包したリポソーム製剤「FF-10832」においては、「ゲムシタビン」を血中で安定化させ、さらにEPR効果(*4)で患部へ集積させて薬剤を放出することを確認し、米国で臨床第I相試験を実施しています。

「トポテカン」は、血中での薬剤の消失半減期(*5)が非常に短く、また副作用として80%以上の患者で重篤な骨髄抑制(*6)がみられる、といった課題を抱えています。これらの課題解決のために、「トポテカン」をリポソームに内包するリポソーム製剤の検討が進められていますが、「トポテカン」はリポソーム膜を通過しやすいため、がん組織に届く前に血液中で漏れてしまうという問題がありました。今回、富士フイルムは、リポソームの成分に新規素材を配合しリポソーム膜の強度を高めることで、「トポテカン」を安定的に内包することに成功。「トポテカン」をリポソームに内包した薬剤を抗がん剤候補品(開発番号:FF-10850)として研究を進め、マウス実験で以下の成果を得ました。

【研究成果1】単剤投与で高い腫瘍縮小効果を確認
(1) 実験内容:
ヒト由来の卵巣がん細胞(ES-2)を移植したマウスに、「トポテカン」「FF-10850」をそれぞれ投与し、各用量での有効性と忍容性を確認。投与期間は、「トポテカン」が5日間連続、「FF-10850」が1回/週の2サイクル。
(2) 結果:
  • 「トポテカン」では30mg/m2(6mg/m2×5日)、「FF-10850」ではわずか3mg/m2(1.5mg/m2×2日)で有効性を確認。両剤を比較すると、「FF-10850」は、「トポテカン」の1/10の総投与量で、「トポテカン」と同程度以上の有効性を示した。
  • 「FF-10850」では、8mg/m2(4mg/m2×2日)で腫瘍縮小効果がみられた。さらに忍容性の指標となる体重変化率は、「トポテカン」よりも少なかった。

[図]「FF-10850」と「トポテカン」投与時の腫瘍体積と体重変化率

以上より、「FF-10850」においては、投与量を引き上げた場合にも、忍容性を維持しながら、「トポテカン」を超える高い薬効が期待されます。

【研究成果2】免疫チェックポイント剤との併用投与で、さらに高い薬効を確認
(1) 実験内容:
マウス由来の大腸がん細胞(CT26)を移植したマウスを用いて、免疫チェックポイント阻害剤と「FF-10850」の単剤投与および併用投与を実施し、有効性と忍容性を確認。投与期間は、免疫チェックポイント阻害剤(30mg/m2)が2回/週の3サイクル、「FF-10850」(6mg/m2)が1回/週の3サイクル。
(2) 結果:
  • 単剤投与の場合、マウスの生存期間の中央値が、免疫チェックポイント阻害剤で19日、「FF-10850」で27.5日であった。一方、併用投与の場合では、マウスの生存期間の中央値が40日を超え、単剤投与と比べて統計学的な優位差を示した。なお、マウスの生存率は、併用投与の場合では、投与後40日時点で75%となり、単独投与の場合よりも高かった。
  • 併用投与した場合でも、体重減少など顕著な副作用は見られず、忍容性に問題はなかった。

[図]免疫チェックポイント阻害剤との併用投与時の生存率と生存期間の中央値

以上より、「FF-10850」は、免疫チェックポイント阻害剤との併用投与で、腫瘍増殖をさらに抑制し、生存期間を延長することが期待されます。

富士フイルムは、2018年11月13日~16日までアイルランド・ダブリンで開催される、世界有数のがん関連学会「第30回 EORTC-NCI-AACR SYMPOSIUM」にて、「FF-10850」の研究成果を発表いたします。

富士フイルムは、化合物の合成力・設計力やナノ分散技術などの高度な技術を活用し、がん・中枢神経系疾患・感染症を重点領域として新薬開発に取り組んでいます。またリポソームをはじめとしたドラッグ・デリバリー・システム(DDS)の技術開発にも注力し、低分子医薬品のみならず、核酸医薬品や遺伝子治療薬など次世代医薬品へDDS技術を応用する研究開発にも取り組んでいます。今後、革新的かつ高付加価値の医薬品を開発し提供することで、社会課題の解決に貢献していきます。

*1 英国グラクソ・スミスクライン社が開発した抗がん剤(一般名:トポテカン、製品名:ハイカムチン)。現在は、スイスのノバルティス社が販売。卵巣がん、小細胞肺がん、子宮頚がんなどに用いられている。

*2 免疫細胞の働きを弱める機構(免疫チェックポイント)を阻害することで、活性化された免疫細胞が、がん細胞を攻撃して効果を示す薬剤の総称。悪性黒色腫、肺がん、胃がん、腎がんなどに幅広く用いられる。「FF-10850」との併用投与で使用した免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体。

*3 米国イーライリリー社が開発した抗がん剤(一般名:ゲムシタビン、製品名:ジェムザール)。膵臓がんの第一選択薬として用いられ、その他にも幅広いがん(肺がんや卵巣がんなど)に用いられている。

*4 がん組織は増殖に伴い周囲の血管を新生させるが、新生血管は未成熟で、正常血管には存在しない血管壁の隙間が存在する。リポソームや高分子などを血液中に滞留させると、隙間がない正常な血管壁は透過せず、がん組織周辺のみで血管壁を透過する。また、がん組織ではリンパ組織が未成熟であるため、透過したリポソームや高分子などが排除されにくく、結果的にこれらはがん組織に集積する。これをEPR(enhanced permeability and retention)効果という。

*5 血中薬物濃度が、半分に低下するまでの時間のこと。

*6 骨髄における白血球、血小板、赤血球の産生が低下した状態。感染・出血リスクの上昇や貧血等の症状を呈する。

本件に関するお問い合わせは、下記にお願いいたします。

  • 報道関係 コーポレートコミュニケーション部
  • TEL 03-6271-2000
  • その他 医薬品事業部
  • TEL 03-6271-2171
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記事の内容は発表時のものです。最新情報と異なる場合(生産・販売の終了、仕様・価格の変更、組織・連絡先変更等)がありますのでご了承ください。

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