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生産技術開発の成果

 

1970年代に入って、写真感光材料の国際競争力の強化と新規事業分野への事業展開に伴って、生産技術の研究開発体制も整備する。生産技術研究所(現生産技術開発センター)を設立し、各工場における製造現場の生産技術上の問題点の解決を図りつつ、長期的構想に立って新技術開発にチャレンジする。数多くの製造技術の開発の中でも、最も独創的な技術として「無接触つる巻型乾燥方式」を実用化し、大きな成果をあげる。また、写真感光材料・磁気記録材料をはじめとして、各製品の加工態様がますます複数多様化してくることに対応して、加工技術面でも、これまで進めてきた工程の自動化研究が開花・結実し、35mm判フィルム加工工程をはじめ、主要な生産工程の自動化、合理化を実現する。

生産技術研究開発体制の整備

研究所の整備・拡充を進め,新製品開発を強力に推進する一方で,新しい製造技術や加工技術の開発も強力に進めていった。

製造技術については,すでに1963年(昭和38年)10月から足柄工場に工学研究室を置き,研究・開発に当たってきたが,1970年(昭和45年)9月,工学研究室を製造技術研究室と改称するとともに,新たに,加工技術の開発のために加工技術研究室を設置した。

これは,これまで写真乳剤の製造やフィルムの塗布・乾燥などの分野の技術開発に技術者を重点的に投入してきた反面,加工工程では,当初,コスト面から自動機械の開発が割に合わないという考え方もあって,加工技術の組織的な開発がやや軽視されていたことの反省に立っての措置でもあった。また,写真感光材料以外の事業分野への進出に伴い,新しい加工技術の開発が強く求められたためでもあった。したがって,加工技術研究室は,組織上は,足柄工場に置かれていたが,運営上は,全社の生産部門を対象として,加工設備や搬送技術の研究,加工工程のシステム工学や包装合理化の研究などを推進していった。

翌1971年(昭和46年)12月には,製造技術研究室と加工技術研究室を統合し,生産技術研究所を発足させた。生産技術研究所は,組織上も全社組織とし,次の3点を主たる目的としていた。

  1. 当社生産技術の総合的レベルアップ
  2. 生産技術者の集中活用と人材の育成
  3. 新規事業に対する生産技術研究の強化

折から,ニクソンショックが発生し,それに続く写真感光材料の関税引き下げで外国製品の対日攻勢も活発化し,各工場では品質およびコストの面での競争力を強化するため,緊急に対策を打ち立てる必要に迫られていた。また,当時建設が進行していた富士宮工場のX-レイフィルム生産設備や感圧紙第3号塗布機,小田原工場磁気記録テープ生産設備などの大型新規設備の早期安定稼動が要請されていた。

これらの当面する緊急課題を解決するため,生産技術研究所は本来の使命である新技術の開発よりも,各工場における当面の生産技術上の問題点の解決に忙殺されることになった。しかし,限られた数の技術者で各工場に山積している生産技術上の研究課題を緊急に解決するためには,より一層現場に密着した生産技術開発体制をとることが望ましかった。このため,1973年(昭和48年)12月,各工場で工場長の直轄下に生産技術研究室を設け,生産技術研究所の研究者をそれぞれ各工場に常駐させることとした。

このように各工場に生産技術研究室を設置したことにより,当面する緊急課題の対策は進行した。一方,長期的構想に立った技術開発をなおざりにすることはできない。ここにおいて再び,1976年(昭和51年)から1977年(昭和52年)にかけて,各工場の生産技術研究室を統合して生産技術部とし,各工場にはそれぞれ生産技術部分室を設けることとした。これによって生産技術研究業務を一元的に運営し,新技術研究体制を強化するとともに,各工場に分室を設けたことによって各工場の生産技術上の課題をも解決し得る体制を確立した。

「無接触つる巻型乾燥方式」の開発

[写真]無接触つる巻型乾燥方式

無接触つる巻型乾燥方式

この時期,数多くの新しい製造技術を開発し,実用化したが,なかでも,当社が開発した独創的技術として「無接触つる巻型乾燥方式」がある。

写真感光材料の製造工程では,写真乳剤の製造工程や写真乳剤をフィルムベースなどの支持体に塗布する工程と並んで,塗装済みのフィルムやペーパーを乾燥する工程が重要な工程の一つである。足柄工場では塗布のスピードアップに対応して,品質のより一層の安定化のため,乾燥工程についても,かねてから,従来の方式から脱却する革新約な新方式の開発に力を注いできた。その結果,被乾燥面に垂直に乾燥風を吹き付けて,乾燥時間の短縮と乾燥の均質化を図り,同時に乾燥設備のスペースも少なくて済む方式を完成し,1965年(昭和40年)から製造設備に採り入れた。

しかし,この方式では塗布の大幅なスピードアップに対応するには限界が予測されたので,この限界を打ち破るためにさらに研究を進め,当社の誇るべき独創的な技術である「無接触つる巻型乾燥方式」を開発した。

この方式は,その表面に多数の吹出孔をもった円筒から,適度に調温・調湿された空気を全面的に噴出させ,その噴出する空気に対し,フィルムに塗布した写真乳剤面を当てるようにして乾燥し,また,その乾燥風の空気圧によってフィルムを支える無接触搬送方式で,フィルムをパスローラーなどに触れることなく,円筒に沿ってつる巻状に搬送することができる。これによって乾燥工程におけるすり傷や静電気の発生を防ぐことができ,塗布スピードをアップしても,それに対応して,品質的に均一な乾燥が実現できたのである。そのうえ,乾燥風と搬送風の2系統が1系統で済み,従来に比べ,乾燥装置の建設費も運転経費も少なくて済んだ。

[写真]恩賜発明賞のメダル

恩賜発明賞のメダル

当社は,「無接触つる巻型乾燥方式」を先ず,足柄工場で,従来の工場の一部に採用し,次いで,富士宮工場に新設する新鋭X-レイフィルム工場から全面的に採用することとした。

このほかにも,フィルム塗布機の機幅を一挙に現行稼動機の倍幅とする技術,写真乳剤の製造に際してその写真性能を迅速に判定する技術など,幾多の画期的新技術も開発し,富士宮工場の新鋭X-レイフィルム工場で実用化した。

「無接触つる巻型乾燥方式」を用いたX-レイフィルム量産技術の確立については,その技術の優秀性が評価され,1974年(昭和49年)3月,取締役副社長福田神郎以下5名が大河内記念技術賞を受賞した。開発担当者に対しては,科学技術庁から同年度の科学技術功労者賞が贈られ,また,恩賜発明賞にも輝いた。

新しい加工技術の開発

加工技術については,これまで進めてきた工程の自動化の技術が1970年代に入ってようやく開花し,結実していった。

足柄工場における35mm判フィルムの巻込工程では,1960年代に開発した第1号自動巻込機は故障が多く,必ずしも予期した成果をあげるには至らなかった。そこで一歩後退して,まず,個々の作業の自動化を一段と促進し,それぞれの作業効率の向上を図り,その実績をもとにして研究を重ね,1970年代半ばに至って,新しい方式で全自動巻込機の第2号機を完成させることができた。この第2号機は全生産工程に組み込まれ,その後,改良を加えて順調に稼動し,加工工程の生産性を大幅に向上させた。

[写真]35mm判フィルム高速全自動巻込機

35mm判フィルム高速全自動巻込機

次いで,1978年(昭和53年)には高速全自動巻込機を完成・導入し,これによって加工工程の自動化と高能率化が実現した。1970年代の10年間に35mm判フィルムの生産数量は倍増したが,加工職場の人員は逆に減少し,しかも,巻込工程では男子による4直3交代が実施され,24時間連続操業が実現できた。

カラー写真の増加に伴って,カラーぺーパーの生産量も急増した。塗布された広幅のカラーぺーパーは,カラープリントのサイズに見合った幅に裁断した後,長尺ロール状に巻き込み,各地のカラーラボに向けて出荷される。カラーぺーパーの加工工程には高速自動裁断機を導入し,また,人手でハンドリングを要する作業を自動化し,全加工工程をコンベヤーラインで結び,ほとんど無人でつながる一貫ラインを完成した。

X-レイフィルムの加工工程は,これまでは暗室内で人手に依存する割合が大きかったが,富士宮工場への生産移管を機に大幅な自動化を計画した。新設工場に数多くの革新的な技術を採用したことによって,塗布・乾燥工程での故障の発生が激減し,工程中の抜取検査を大幅に削減できるようになったことも,それに続く加工工程の自動化を容易にした。新工場の建設時に,高速連続裁切断やフィルム保護のため挿入する挟み紙の挿入工程の自動化,搬送および包装工程の自動化など,各工程の自動化を一挙に実現すべく計画し,技術開発に取り組んだ。

しかしながら,この計画はあまりにも短期間に成果を急ぎすぎたため,新工場の操業開始日に加工機械設備が計画どおり稼動せず,加工技術開発のあり方に貴重な教訓を残す結果となった。

この反省のうえに立って,改めてX-レイフィルム加工合理化計画を立て直し,1977年(昭和52年)から1981年(昭和56年)にかけて,逐次,新規開発の設備を導入し,ここに加工技術開発の成果を開花することができた。

このX-レイフィルム加工合理化計画は,塗布工程で写真乳剤を塗布した広幅のフィルムを一定幅に裁断した後,そのフィルムを所要のサイズに切断して,袋詰め・包装するまでの工程を一貫連続して自動化するシステムである。さらに,箱詰め工程でも,シート状の材料を工場に搬入し,包装作業の現場で箱を作りながら箱詰めする方式をつくりあげた。

磁気記録材料など,写真感光材料以外の新規事業分野の各製品でも,複雑・多様な加工対応が求められてきた。当社は,写真感光材料生産のために開発された加工技術を他の部門の加工工程にも応用した。磁気記録テープの裁断加工工程をはじめ,感圧紙やPS版などの生産分野でも,写真感光材料の加工技術・加工設備技術を基礎として,高度の加工技術を開発し,実用化していった。

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