1999年、大夕張という地区を偶然通りかかった。ここは炭鉱街だったが閉山となり、 97年に住民が退去していた。誰もいない街に響き渡る虫の声。人の気配が急速に消え、自然に還りつつあるその姿に大きく心を動かされた。
この出会いを機に、人の残した産業構造物が自然に還り行く時の表情を撮りたいと思いを抱いた。
この時私の目に映ったのは、廃虚の侘しさではなく、生命力あふれる姿だった。
これは「産業的自然（インダストリアルネイチャー）」という概念で説明されており、人の手を離れた産業構造物が、自然に同化していく姿に芸術的な美しさを見いだすものだ。
ドイツ等では古くからこうした概念があり、炭鉱遺産再生の柱となったという。 こうした「産業的自然の宝」は、北海道には数多くある。それらに内在する生命力や美しさを表現することで、炭鉱遺産の新しい価値を未来に向けて創造していけるのではないかと考えている。
是非、ご高覧ください。

KEN五島